2003年10月1日水曜日

体は全部知っている/吉本ばなな


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『せつない』という言葉がある。私はあまりこの言葉が好きでない。歌謡曲の歌詞なんかに意味なくやたら使われているからかもしれないが。。。でも、『せつない』という言葉でしか現せない種類の感情は私の中にもある。吉本ばななさんの小説を読む時、いつもその事を思い出す。そして少しだけその感情にひたっていたくなる。そんな私としては少し恥ずかしい自分を許してくれる吉本ばななさんの力ってすごいなぁ。日本人で良かった、生活で使い込んだ言葉の感覚を持ち込んで彼女の小説を読む事ができる。ただそれだけで嬉しい。

体は全部知っている〜なんて素敵なタイトルなんだろう。私もそう思う。心とか気持ちとかよりも体のほうが正直だもの。歌い手という、体が資本の職業を選んだ私にとって、自分のからだが一番ミステリアスな存在だ。一生この体につきあっていくんだ毎日そう思っている。だから、この体が色んな事を知って記憶しているなら、それが私自身に届けられるまで、ねばるしかないなぁとこれもまた毎日思っているのだ。