2002年12月10日火曜日

自分の中に毒を持て/岡本太郎


My Favorites:酒井ちふみが感銘を受けた作品についてお話しします

『つまらない大人になりたくない』と昔声をからして歌っていた歌手がいて私は、その頃その歌声にスピリットに、いたく心を打たれていた。そして、それは今でも全く変わらない、変るもんじゃないと思う。

大人になるつもりがなくても、時がこっそり、ちゃっかり、子供を、青年へ大人へと変えて行く。精神を磨くすべの無い人たちは、外見は大人だけど中では大人になりたくない病にかかって、自分にふりかかる災難や困難からなんとか逃げて上手くやって行こうと必死だ。
自分だけで精一杯だから、人から何も言われたくないし人に言う気もないし、ましてや協力しあう必要もない。
大人じゃなかったあの頃だから、『つまらない大人になりたくない』ってつついたらすぐに泣き出しそうな、触れようとする人がいたなら、その人も自分も傷つけそうな、そんな言葉で、語るんだろう。

大人になった今、何て言おうか。『おもろい大人になってやる!』こんな感じ?

最近、一冊の本を読んでいます。夢中になれる本です。
自分の中に毒を持て/岡本太郎

テロ事件以降、平和とか幸福とかっていう問題が、私の問題になりつつある。憤りを感じずに入られない。私達はどうしていけばよいんだろうって思う。

私はヴォイス・トレーニングを教えていて、メジャーデビューを夢見る若い連中がわんさか集まってくるのです。その中で、彼等と歌を、発想を、戦わせているのですが。その時、彼等の周辺では、音楽について真剣に話しあう、多分唯一の『大人』が私なんだと思うと、その責任は重大やわと思うし、生きている以上、常に何かを発信しているわけで、私は歌で発信しているわけで。絶えず発信し続ける事を『仕事』というのだと思っています。無関係ではあり得ない。

〜たとえ、自分がうまくいって幸福だと思っていても、世の中には、飢えや、差別やまた自分がこれこそ正しいと思う事を認められない苦しみ、その他、言い出したらキリがない。深く考えたら、人類全体の痛みをちょっとでも感じとる想像力があったら、幸福ということはありえない。。。。。。自分のところだけ波風が立たなければそれでいいそんなエゴイストにならなければ、いわゆる”しあわせ”ではあり得ない〜

この本は青春出版社の青春文庫(笑)から出ている。ぬくぬくと、事をなし得た気になった大人達が、思春期を送る若者達に『これを読めばいいよ』とか勧めていそうだ。私からしたら、これを読まなきゃいけないのは、正真正銘の『大人』達だ。子供達は、大人を映す鏡だし、私の生徒、私の歌もそうだろう。

拉致事件関連の報道が多くなり、問題が長引きそうなのは確実だ。視聴者のぎらついた好奇心を逆なでする事しか考えていない、マスコミの報道にももううんざりだ。ある日、電車のつり広告に、こんな記事を見てしまった。連日拉致被害者の家族の方々の会見が続いたが、その御家族をやりだまに上げて『〜〜(だれだれ)の叔父はエロ親父!』と書かれていた。有名な週刊誌だ。日本の中では大きな出版社だ。『ひどい会社だ』とも言いたい。でもそれだけじゃない、それを世に送りだしても、誰も文句を言わない日本の大人だという事を、出版者は分かっているから、平然とそんな記事が出回る。

自分の弱さや甘えやプライドや、世間や、得体の知れない物達と
ドロドロの格闘をくり返して、おもろい大人になろう、私は、そう宣言するのだ。